エンジンにダメージを与えるノッキングの原因と症状
エンジンオイル交換など具体的な対策とは?

走行中に発生する振動やノイズは車の不調を知るきっかけになる重要な手がかりとなります。エンジンから「カンカン」や「ガラガラ」といった不快な音が聞こえてきたり違和感のある振動が伝わってきたりしたら、それはノッキングの可能性があります。

ノッキングは稀に発生する程度であれば大きな問題にはなりませんが、頻度が増えたり連続して発生する状況になるとエンジンにダメージを与える恐れがあります。

ここではノッキング発生のメカニズムや対策方法、そしてエンジンのコンディション維持についておさらいします。

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ノッキングとは

エンジンの正常な工程とは

多くの車は内燃機関であるガソリンエンジンもしくはディーゼルエンジンを積んでいます。これらのエンジンが回転している間は、吸気→圧縮→燃焼→排気の4つの工程を繰り返しています。このことから4サイクルエンジン(4ストロークエンジン)とも呼ばれておりますが、燃焼についてはガソリンエンジンがプラグのスパークで点火させるのに対してディーゼルエンジンはプラグを使わずに自然発火を促す仕組みになっています。これはガソリンエンジンとディーゼルエンジンの大きな違いです。

エンジンにより高出力を求めつつ燃費を改善するためには、吸気工程でたくさんの混合気(空気と燃料が混ざった状態)をシリンダー内に吸い込み、圧縮工程で混合気を可能な限り圧縮し、燃焼工程で点火して、爆発的な膨張によってピストンを押し下げます。次の排気工程では燃えたガスを効率よくシリンダーの外へ押し出します。

以上はガソリンエンジンの説明であり、ディーゼルエンジンでは吸気工程において空気を吸い込み、圧縮工程で吸気中に燃料(軽油)を高圧噴射し、燃焼工程で自然発火させています。

ノッキングは異常燃焼のひとつ

エンジン内部のオイルの動き
1分間に数千回転するエンジンですが、上記で説明した工程が緻密にコントロールされることによって、高い燃焼効率の実現を可能にしています。なかでも重要なコントロールのひとつが点火のタイミングです。

点火タイミングはエンジンの回転数や負荷の大小、アクセルペダルの踏み込み量など、さまざまな条件にもとづいて車の頭脳であるECU(エンジンコントロールユニット)によってリアルタイムに調整されています。

点火のタイミングを早めたり遅らせたりすることは、かつてディストリビューターという部品を使っていた名残から、進角とも呼ばれています。現在の車は、理想的なタイミングで点火するよう、よりきめ細かく進角を制御するようになってきております。

ところが、エンジンにとって不都合な条件が揃ってしまうと、スパークプラグの点火によらず、混合気が勝手に自然発火してしまうケースがあります。これが異常燃焼です。この異常燃焼そのものや、異常燃焼によって生じた振動やノイズのことをノッキングと呼んでいます。

スパークプラグを備えないディーゼルエンジンにおいても、噴射された燃料が発火し、その燃焼が伝播する様子はエンジン設計時に緻密に計算されています。この設計時の狙いとは異なる異常な燃焼のことも同様にノッキングと呼ばれます。

ノッキングにも数えられるデトネーションとプレイグニッション

異常燃焼にはデトネーションやプレイグニッションがあり、ノッキングとは区別されることもありますが、エンジンへの悪影響はいずれも同じです。

デトネーションは圧縮されて高温・高圧になった混合気がなんらかの衝撃によって自然発火してしまう現象です。プレイグニッションはスパークプラグが火花を散らす前に燃焼室内に存在する熱源によって混合気が着火してしまうことを指します。

ノッキングが発生してしまう原因

ノックセンサーの異常
ノッキングによってエンジンが深刻なダメージを受けないように現代のエンジンにはノックセンサーが備わっています。ノッキング特有の周波数をもつ振動をセンサーが検知すると、ECUがノッキングを解消するように点火時期などを補正します。このノックセンサーに不具合が生じるとエンジンの吹け上がりが悪くなったり、ノッキングが発生しやすくなる可能性もあります。
オクタン価が低いガソリンの使用
燃料のガソリンにはレギュラーのほかにハイオクがあるのはご存知のとおりですが、ハイオクは「ハイオクタン」の略で、オクタン価の高い燃料のことを指します。オクタン価が高ければ高いほど燃料は発火しにくくなります。

高性能なエンジンではこのハイオク燃料の使用が指定されています。高性能エンジンに共通するのは高い圧縮比です。空気は圧縮されればされるほど温度が上昇するので混合気が自然発火しやすくなってしまいます。ハイオクであれば自然発火しにくいため圧縮比を高められます。これがハイオク指定になる理由です。ハイオク指定のエンジンにレギュラーガソリンを給油するとノッキングが発生しやすくなります。ただし多くの場合はノッキングが発生する前にエンジンの出力が低下します。これはレギュラーガソリンの使用で異常燃焼が発生しないようECUが制御しているからです。
燃焼室内の火種
燃焼室内の熱源がきっかけとなって発生する異常燃焼がプレイグニッションです。着火の原因には以下のようなものがあります
ピストンヘッドなどに付着したカーボン
長期間使用したエンジンは燃料の燃えカスなどがススとなって燃焼室内に付着してしまっています。エンジンを分解して取り出したピストンヘッドが真っ黒になっているのは、このカーボンが堆積しているからです。エンジンが動いている間は付着したカーボンも高熱になり、スパークブラグが点火する前にこれが火種となって異常燃焼が発生することがあります。
混入したエンジンオイルによる着火
燃焼室内にエンジンオイルが侵入することがあります。バルブ機構を潤滑するオイルがバルブの軸であるステムを伝わってきたり、ピストンとシリンダーの間に形成される油膜が残ることもあります。こういったオイルが高温になり異常燃焼を誘発することもあります。
スパークプラグの熱
スパークプラグそのものが熱を抱えてしまい、火花を放っていないにもかかわらず燃料に着火させてしまうケースもあります。

マニュアルトランスミッションの間違ったギア選択

MT車を運転されたことのある方なら、低速走行時に高いギアを選んでしまい車がギクシャクした動きになってしまった経験があるかもしれません。

これはノッキングの発生が原因です。エンジンは高い負荷がかけられたときに異常燃焼を起こしやすくなるためです。
エンジンのチューニング
よりハイパワーを求めてエンジンチューニングを行うとノッキングが発生しやすくなることがあります。ハイパワーエンジンの特徴は高圧縮比やターボなど過給機による高い充填効率であるため、このような要素は燃焼室が高温になりやすく異常燃焼を誘発することがあります。ただし、すべてのエンジンチューニングがノッキングを引き起こすわけではないため、正しく熱対策を行うことやECUの制御を含めて見直すことで解決することも可能です。

ノッキングによる症状と実害

振動やノイズの発生

エンジンの燃焼室内で異常燃焼が発生するとノッキングが起こります。ノッキングは「カンカン」や「カラカラ」といった金属音をともなう振動です。ディーゼルエンジンでは「ガラガラ」と、より耳ざわりな音となって響くこともあります。

エンジンの深刻なダメージ

ノッキングは単なるノイズや振動だけではありません。激しいノッキングが発生すると、エンジンのガスケットが抜けたり、ピストンやピストンリング、コンロッドが破損したり、破損したコンロッドやクランクシャフトによってクランクケースに穴が空くこともあります。

穴が空いたクランクケースからはエンジンオイルが飛び出して道路に撒き散らされることもあります。撒き散らされたオイルは後続車を重大なトラブルに巻き込む可能性もあります。

ノッキング対策

ノッキング対策には以下のようなものがあります。

ノックセンサーの交換

ノッキングを検知するセンサーに不具合が生じていることがあります。ディーラーや整備工場などでメカニックの診断を受け、適切な整備を施すようにします。
適正なオクタン価の燃料を使用する
ハイオク指定のエンジンには必ずハイオクを使用するようにします。ちなみにレギュラー仕様のエンジンにハイオクを給油してノッキングが軽減されるケースもありますが、その効果はエンジンや使用状況によって左右されるので限定的である可能性もあります。

スパークプラグの点検と交換

劣化したスパークプラグによって点火が弱くなると燃焼室内の未燃物質が増える傾向があります。こういった未燃物質の自然発火も異常燃焼になります。

一般的にスパークプラグは消耗品ですので、メーカーの指定に従い定期的に交換するようにしましょう。
付着したカーボンを取り除く
ピストンヘッドなど燃焼室内に付着したカーボンを取り除きます。清浄のためだけにエンジンを分解するのは費用の観点から考えても非現実的ですので、燃料に混ぜる添加剤などのご利用をおすすめします。添加剤選びに困ったらお近くのオートバックスまでご相談ください。

エンジンに優しい運転を心がける

発進時や低速走行時にアクセルを深く踏み込むような負荷のかかる運転はノッキングを招きやすくします。またマニュアルトランスミッション車であれば適切なギアを選択することも大切です。

エンジンを労る定期的なオイル交換

ノッキング対策の前提となる必須メンテナンス

ノッキングの対策としてエンジンオイルの交換が推奨されるのは、ごくまれですが、効果がないかといえばそうではありません。むしろ定期的なエンジンオイル交換はノッキング対策の前にやるべき必須メンテナンスとも言えます。

現在ではオートマチックトランスミッション車が主流になっており、エンジンとトランスミッションを統合制御することでノッキングの発生が巧みに抑えられています。

一方で、高出力と低燃費を両立するために高圧縮となっている最新のエンジンにとっては過酷な運転条件が揃っている面もあります。

例えば吸気温度の高くなる真夏の炎天下では、ミニバンに定員の上限まで乗車して荷物も満載し低速からの登坂でアクセルを深く踏み込む場面などでは、断続的にノッキングが発生することがあります。ノッキングが発生していても現在の車は遮音性が高くエンジンの振動も巧みに遮断されているため、オートマチックトランスミッション車ではドライバーがノッキングに気づかないこともあります。

マニュアルトランスミッション車であれば、坂道でギアの選択を間違ってしまった場合など、ドライバーはノッキングの発生に気付くのが比較的容易でした。オートマチックトランスミッション車が主流となった現在ではノッキングが知らないうちに発生していることも少なくなく、予期せずエンジンのダメージが蓄積しているとも言えます。

エンジンの負担を軽減する定期的なオイル交換

エンジンオイルには潤滑作用や冷却作用をはじめとして、エンジンの負担を軽減させる働きがあり、定期的なエンジンオイル交換が欠かせません。

オートバックスでは、エンジンのグッドコンディションを長く維持するためにも、半年に一度、もしくは走行距離5,000kmごとに一度のエンジンオイル交換を推奨しています。

また、ターボエンジン搭載車なら3ヶ月に一度、もしくは走行距離2,500kmごとに一度の、よりきめ細かいメンテナンスをおすすめしています。

まとめ

ノッキングは不快な振動やノイズを発生するだけでなく、深刻なエンジントラブルを招く可能性があり看過できません。現在の車は出力と低燃費の両立が求められており、ぎりぎりまで燃焼効率が高められています。高い燃焼効率とは実は異常燃焼が発生する一歩手前のところでもあります。

それゆえにノックセンサーなどの監視役がエンジンの状態を常に見守っていますが、このような状況ではエンジンの負担は大きくなりがちです。エンジンの負担を軽減するには定期的なエンジンオイル交換が効果的です。

ノッキングの原因はさまざまではあるものの、オイル交換を欠かさないことが対策の前提になります。エンジンオイル交換についての疑問やお悩みはお近くのオートバックスまでご相談ください。
オイル交換とはなにを指す?
オイル交換の『オイル』とは、一般的に自動車のエンジンオイルを指します。
種類は鉱物油・部分合成油・全合成油があります。
車種やエンジン特性、気候条件をはじめとする地理的な環境、使い方などによって、適合するエンジンオイル粘度が変わります。
安全で快適なカーライフのためには、最適なオイルを選ぶとともに、適切なタイミングで定期的に交換することが大切です。
オイル交換の頻度を多くするとどうなる?
エンジンオイル交換をやりすぎることによる問題は特にありません。
シビアコンディションと言われるエンジンに負担がかかるような状況が多い場合は、早めの交換がおすすめです。
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