エンジンオイルの油温 エンジンオイルの油温

エンジンオイルの油温上昇がもたらす影響と対処方法とは?

エンジンオイルは車を走らせるのに不可欠な存在であり、エンジンのコンディションを維持するためにも定期的なメンテナンスは欠かせません。今回はエンジンオイルの温度という視点からエンジンオイルの役割と重要性をおさらいします。

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エンジンオイルの役割をおさらい

エンジンは金属部品の複雑な集合体です。燃焼室で燃料を燃焼させるとともにその爆発力を回転エネルギーへと転換させるため、たくさんの部品が摺動したり回転したりしています。

エンジンオイルの役割は部品が接している部分の「潤滑」、燃焼室の気密を上げるための「密封」、燃焼による温度上昇を抑える「冷却」、燃焼や回転運動によって発生する汚れを運ぶ「清浄」、金属部品を腐食しにくくする「防錆」などがあります。

この他にも応力を分散させる「緩衝」やエンジンオイルそのものが酸化するのを防ぐ「中和」など多様な役割を担っています。
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エンジンオイルの役割の「冷却」とは?

燃焼室まわりを中心にエンジンは自ら高温にさらされることになります。水冷エンジンではシリンダーヘッドやシリンダーブロックにウォータージャケットと呼ばれる水路があり、冷却水を循環させてラジエターで冷やしています。

同時にエンジンオイルはオイルポンプによってエンジン各部に送られます。エンジンオイルは燃焼室まわりで最も高温になり、油溜めであるオイルパンに戻って冷やされます。この繰り返しによってエンジン内部の温度を下げるのに貢献します。これがエンジンオイルの「冷却」効果です。

冷却はエンジンそのものにとって重要であるばかりかエンジンオイルそのものにとっても重要です。エンジンオイルは一定の温度範囲に保たれていることで本来の役割を担うことができますが、その温度範囲を超えてしまうと「潤滑」や「気密」など「冷却」以外の働きも低下してしまいます。

エンジンオイルは適正な温度であることが十分に活躍できる条件なのです。

エンジンオイルの適温とは?

エンジンオイルの適温としてひとつの目安になるのは約100度。もう少し低い80度から90度あたりがベターとも言われます。

適温の目安はエンジンオイルの粘度を表す「SAE(Society of Automotive Engineers:米国の自動車技術者協会)」規格とも無縁ではありません。オイル缶を手にしたことがある方なら写真のようなSAE規格の粘度表示をご覧になられたことがあるのではないでしょうか。

ハイフンの前の「10W」が低温時のオイルの粘度を表すのに対して、ハイフンの後の「30」は高温時の粘度を表しています。この高温時とは具体的に100度と定められています。

ちなみにこの数値が大きくなるほど油温100度の時に粘度が高いことを意味しており、温度上昇に対して粘度の低下が少ないオイルということになります。

エンジンオイルの温度はエンジンのどの部分で測るかによっても異なります。

エンジンオイルの油温計のセンサーはエンジンオイルをためておくオイルパンと呼ばれる部品の付近やオイルフィルター付近に備えられることが一般的です。オイルパンよりもエンジン内部ではエンジンオイルの温度が高いので、オイルパンの温度で判断するのであれば80度〜90度がベターということになります。

エンジンオイルの温度が過度に上昇したらどうなる?

実際の走行において油温が100度を上回ることもあります。エンジンはそのような現象を想定して設計されていますので短時間の上昇であれば神経質になる必要はありません。

しかし、エンジンオイルの油温が慢性的に高い場合、オイルの粘度が低くなるため、エンジンオイルの働きが低下します。その結果以下のようなことが考えられます。

エンジンに深刻なダメージを与える

油温の慢性的な上昇がエンジンにダメージを与えることがあります。

具体的には、金属部品各部の油膜を保持できなくなり(油膜切れ)シリンダーやクランクシャフト、バルブ機構などが適切に潤滑されず、エンジンの焼き付きの原因になります。
エンジンオイルそのものが劣化する
油温が過度に高いとエンジンオイルそのものがダメージを受けて徐々にその機能が低下していきます。

劣化の進行が早くなる結果エンジンを保護する性能がダウンするほか、エンジン本来の性能を十分に発揮させられなくなります。

エンジンオイルの温度が上昇しやすい状況とは?

エンジンオイルの温度が上昇しやすい運転シーンとして代表的なのは以下のようなものがあります。

真夏の渋滞走行

エンジンオイルの油温が上昇するときは一般的に冷却水の温度も上昇しています。言い換えると、真夏に渋滞でノロノロと走るシーンなど冷却水が十分に冷やされない状況ではエンジンオイルの温度も上昇しやすくなります。

サーキットでのスポーツ走行

エンジンの高回転を維持するようなスポーツ走行ではエンジンオイルの油温が上昇します。これは競技専用に作られたレーシングカーであっても同じです。

そのためレーシングカーの油温管理も非常にシビアに行われています。
峠の上り坂など負荷の高い走行
エンジンに大きな負荷のかかる登坂などもエンジンオイルの温度が上昇する要因になります。

エンジンの回転数そのものは高くなくてもアクセルを踏み込む量が大きく、加えて走行速度が低いために十分な走行風でエンジンやラジエターを冷やせないことも影響します。
エンジンオイルが減っている
エンジンオイルが規定量よりも少ない場合もエンジンオイルの温度が上昇しやすくなります。

これはヤカンに入れた水の量が少なければより早く沸騰するのと同じことです。
エンジンにターボチャージャーなどの過給器が備わっている
エンジンにターボチャージャーが備わっている場合もエンジンオイルの温度が上昇しやすくなります。

理由はターボチャージャーでは高温の排気を利用していること、またシリンダーに送り込まれる空気が圧縮されるために、圧縮による熱が発生します。こういったことからエンジンまわりの温度上昇にともなって油温も上昇しがちです。
エンジンが空冷式や油冷式である
一般的な水冷式ではなくエンジンが油冷式や空冷式の場合も油温が上昇しやすいと言えます。油冷式とはエンジンの冷却をクーラントに頼る代わりにエンジンオイルの量を多くすることでオイルそのものの冷却効果に頼るものです。

また空冷式エンジンにしても、走行風でエンジンを冷やすイメージがあるものの、実際には油冷式と同様にエンジンオイルの量を多くしてオイルの冷却効果に依存する実質的な油冷式であることが珍しくありません。

油冷式はクーラントの役割までエンジンオイルが担うことになるので油温は上昇しやすくなります。

エンジンオイルの温度が上昇しやすいときの対処方法

エンジンそのもののメカニカルトラブルがないのであれば以下のような油温対策が有効です。

エンジンオイルをチェックする
エンジンオイルの量と劣化をチェックします。特に、エンジンオイルの量が規定量に達していないと油温上昇の一因になります。

エンジンの冷却水(クーラント)をチェック・補充する

冷却水が減っていないか確認します。冷却水は沸騰と冷却を繰り返すことで少しずつ自然に減ってしまうものですが、極端に少なくなっている場合は補充するだけでなくホースやクランプ部からクーラントが漏れていないかチェックする必要があります。

オイルクーラーを装着する

クーラントをラジエターで冷やすのと同じ原理で、エンジンオイルを積極的に冷やすのがオイルクーラーです。オイルクーラーを装着することでエンジンオイルの温度上昇を抑えられる効果があります。

ただし、冷間時からの始動(コールドスタート)ではエンジンオイルが温まりにくくなります。またオイルクーラーと配管にもエンジンオイルが満たされるため、エンジンオイル交換時に必要なオイルの量が増えるといった面もあります。

車種によっては効率よく冷却できる場所にオイルクーラーを配置(取り付け)できないこともあります。

油温計を備える

そもそも油温計がないのであれば油温の上昇もわかりません。油温計を取り付けることでエンジンオイルの温度を適切に管理することができます。

センサーを取り付けるため車両にパーツの装着が必要なこと、また室内にメーターを取り付けることになるので店頭のスタッフにお気軽にご相談ください。

エンジンオイルを交換する

エンジンオイルの温度上昇を抑える目的ではありませんが、高温にさらされるなど酷使されて本来の働きが低下したオイルを使い続けることは、エンジンの性能を維持できないばかりかエンジンの劣化を早める原因にもなります。

真夏の道路渋滞、長い峠道の上り等でもエンジンが正常な状況であれば、多少油温が高いからといってその度に停車するというわけにもいきません。エンジンの負荷が大きな走行が連続した後は、早め早めのエンジンオイル交換がオススメです。

エンジンオイルの選び方

かつては冬と夏でエンジンオイルのグレードを使い分けることも珍しくありませんでしたが、現在ではマルチグレードのエンジンオイルが主流になり真夏であっても真冬であっても通年で同じグレードのオイルを使うことが一般的になっています。

その上で、純正指定されているグレードよりも高温時の数字が大きなオイル(高温でもより粘度を維持できるオイル)を選択肢に入れるのも一案です。

ただし、ハイブリッドカーなど低燃費車では敢えて高温側の粘度を柔らかくすることで走行抵抗を削減して少しでも燃費を稼ごうとしている車種もあります。こういったエコカーでは純正指定のグレードと同じオイルを使うことをオススメします。

エンジンオイル油温上昇に強いエンジンオイルとは?
エンジンオイルの温度が上昇しても適正な粘度を維持できるグレードであれば、比較的温度上昇に対しても耐性があると言えます。

まとめ

エンジンオイルは真夏の渋滞を走行してもしっかりと負荷に耐えてくれる働きものです。

ストップ&ゴーの激しい市街地などではごく普通に走っていてもエンジンオイルが適正な油温範囲を超えてしまうこともあります。極端に油温が上昇してしまうのは問題があるとして、一般的なドライブにおいては定期的なエンジンオイル交換を実施することで、車のグッドコンディションを維持したいところです。

オートバックスではエンジンオイル交換作業の予約はもちろん、エンジンオイル選びのご相談も承っておりますのでぜひご利用ください。

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